Archive for August 2008

生物と無生物のあいだ – 福岡 伸一

詩的才能に溢れた科学者による生命に対する賛歌

なんと詩的才能に溢れた科学者でしょうか。特にプロローグとエピローグの文章にその才能が溢れています。

そしてストーリーテラーとしても優れています。本文の文章も全て簡潔にして明快であり一気呵成に読んでしまいました。野口英世に対する相反する評価、DNA発見の裏に隠された真実、シュレーディンガーからシェーンハイマーに至る新たな生命像の誕生、そして彼自身の研究などが本当に情熱的に描かれて秀逸です。

本書で私が一番感銘を受けたのは次の点です。生命とは単なる自己複製機能を持ったシステムであるだけではなく、一見安定して秩序だっているように見える生体内の各組織の分子は絶えず消滅と生成を繰り返していると言う知見に基づいた「動的平衡」にあるのが生命であるとの観点です。この知見は本当に新鮮でした。しかし、これは実は1930年代にすでに提示されていたのです。全くの驚きです。そして「半年も会わなければ、分子のレベルでは我々はすっかり入れ替わっていて、お変わりありまくりなのである」には思わず笑ってしまいました。

そして「私たちは、自然の流れの前に跪く以外に、そして生命のありようをただ記述すること以外に、なすすべはないのである」

生命を論じた書物の中でもひときわ精彩を放つ素晴らしい一書です。一読することを強くおすすめします。

ただし、参考文献を引用してあれば本主題をより掘り下げて理解したい人の役に立ったであろうと思われる点だけが残念です。

心に留めおくべき言葉ーその2

心に留めおくべき言葉ーその2
Chance favors the prepared mind – Louis Pasteur
生命とは代謝の持続的変化であり、この変化こそが生命の真の姿である – Rudolph Schoenheimer