Archive for 27th May 2009

世界初の遺伝子組み換え霊長類

実験動物中央研究所の佐々木えりか研究員が中心となったチームが、霊長類として世界初の遺伝子組み換えコモン・マーモセット(南米原産の小型サル)の作出に成功したと言うニュースが飛び込んできました。ライフサイエンスにおける日本発の画期的業績ですので、ここに紹介することにしました。

これまで、医学研究で使われる遺伝子組み換え動物としては、遺伝子組み換えマウスが多方面で応用され、数多くの価値ある成果を生み出してきていますが、マウスと人間の違いが大きく、マウスでの実験結果が必ずしも人間にそのままでは応用できない場面に出くわすことも少なからずあります。その様な状況下で、コモン・マーモセットなどのより人間に近い霊長類の遺伝子組み換え動物の作出が望まれてきました。そして、今回ついに実験動物中央研究所の佐々木えりか研究員が中心となったチームがその遺伝子組み換えコモン・マーモセットの作出に成功したのです。

GFP遺伝子(緑色蛍光タンパク質:Green Fluorescent Proteinを発現する遺伝子)を組み込まれたコモン・マーモセットの親から生まれた子供もこのGFP遺伝子を受け継ぎ、GFPを発現していることが確認されました(GFPにより紫外線を当てると身体が緑色に発光します)。つまり、遺伝子を組み換えたコモン・マーモセットを安定して作出する技術が確立されたのです。ちなみに、このGFPは1960年代に下村脩氏が発見・分離精製に成功したタンパクで、その後のライフサイエンス研究において欠くべからざる物質となっていることは、彼が本業績で2008年にノーベル化学賞を受賞したニュースもまだ新しいので皆さんもご存じでしょう。日本人研究者の発見が新たな日本人研究者の発見につながるという、非常にうれしいニュースでもあります。

最後に強調しておきたいのは、今回の成果は、実験動物中央研究所の長年の地道で着実な技術の積み重ねと、多くの研究者の弛まぬ努力のたまものであることです。この遺伝子組み換えコモン・マーモセットが医学研究の場で効果的に使われ、人間における発病機序の解明や疾患治療法の開発に貢献できる研究が加速することを期待したいと思います。

ちなみに、本成果はNature誌の最新号(2009年5月28日号)に掲載されています。

Common Marmoset

Common Marmoset