雲はなぜ落ちてこないのか

深い洞察に基づいた含蓄ある科学読本

宇宙物理学者である佐藤文隆氏が、専門的な数式をいっさい使わずに科学の素晴らしさを幅広い観点からやさしく説いたすばらしい科学読本です。

タイトルだけを見ると「なぜ雲が落ちてこないのか」の説明に終始するような印象を受けますが、実は雲に絡んだ気象の話から始まり、身近なところでは色彩の話、水の話、地球の空、地球と生命の関係、地球環境、などの話題から、太陽、火星、宇宙、素粒子、等々の宇宙的な話題まで、実に幅広い科学分野に話はおよびます。これだけの幅広い分野に関するこの思索に富んだ話題をやさしく解説できる著者に脱帽です。

各々の話題において色々と学ぶところは多かったですが、特に「なぜ山頂は禿げてくるか?」の項では、生物の存在しない世界でなら山頂は自然と禿げてくるのであるが、生物の存在が山頂を禿げることから守っていると言う環境と生物との相互作用の重要さを知り、まさに目から鱗でした。

また、二酸化炭素排出などの人間の活動が地球温暖化に及ぼす影響を過大に取り上げすぎる風潮に対しても、科学者として非常に冷静な立場を取っています。

いづせにせよ、全編を通じて、日本の受験一辺倒教育が殺してきた、日常の一つ一つの現象に対して「なぜ?」「どうして?」と言う素朴な好奇心を持つことの重要さを再認識させてくれます。

日本の科学教育を著者のような人物を中心とした有識者組織に任せれば、現在の不毛な日本の科学教育も改善されると思うのは私だけでしょうか。

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