生と死の自然史 ― 進化を統べる酸素

多くの生命の生存にとって必要不可欠である一方、生体を攻撃し多大なダメージを与える「酸素」を切り口にして、地球上での生命進化論を解説したすぐれた科学読本です。

地球科学、考古学、生物学、遺伝学、化学、医学等々の驚くほど広範な学術分野の膨大な研究に基づいた、その広範にして深く切り込んだ解説を理解するにはかなりの集中力を持って読み進める必要があります。しかし、そこから得られる地球の歴史、生命進化の歴史、老化の秘密等々、得られる知識も膨大です。

その膨大な知識の中からごく一部を紹介しますと、例えば、老化したミトコンドリアから漏れ出る活性酸素がどれほど生体に取って危険であるか、またそれを防ごうとして必要以上のビタミンCやE、コエンザイムなどの抗酸化物は外部から大量摂取してもほとんど無意味である、さらに、日本人の平均余命が長いのは、高頻度でMt5178Aと言う呼ばれる変異型のミトコンドリア遺伝子を持つことから説明されるかもしれない、等々、どれも非常に興味深いものです。

また、著者の「生物は、自ら火星や金星のような不毛なものとなる運命から地球を救ったのである」と言う言葉は、多くの示唆に富んでいますし、最後で述べられる「幅広く多様なものを食べよ、しかして食べ過ぎるな、過度の清潔を避けよ」と言う言葉も、全編を読み終えた後に読むとその重要性がしっくりと心にしみこみます。

充実した索引、用語解説、参考文献、訳者注も本書の美点です。日本語訳もまずこなれており読みやすい部類に入ります。

地球の生命史を知りたいと思う人に、まとまった時間の取れる時に集中して読まれることをお勧めします。

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