「科学の未来」フリーマン・ダイソン

物理学者フリーマン・ダイソンが、科学と技術に関して彼の持つ透徹した深い洞察力に基づき、「物語」「科学」「技術」「進化」「倫理」の五つの主題のもと、過去の歴史から説き起こして来るべき人類の未来を描きます。

特に、第4章の「進化」の章において、10年後、100年後、1000年後、1万年後、10万年後、100万年後、そしてそれ以降の未来において人類がたどるであろう予想図に関して語る場面は、凡百のSFを読むよりも遙かにエキサイティングでした。

原著の初出は1997年ですから、これらの予想の中にはすでに実現されている技術(ヒトゲノム解読等)もありますが、決してその古さを感じさせない点も本書の魅力の一つでしょう。

ただし、多くの場面で翻訳者が科学と技術とを混同している点には少々疑問を感じます。科学と技術は渾然一体となって発展してきたことは事実ですが、だからといって著者は決して科学と技術とを混同していないと思います。そういう意味でも原著「Imagined Worlds“>Imagined Worlds」を直接読むのが良いかもしれません(原著の英文は平易です)。

また、科学自体は、宇宙の真理を極めようとする人類の文化的活動であると思っている私にとって、科学が悪を産み出すこともあれば善にもなりうるという著者の主張には、完全に賛同することはできません。

このように、諸手を挙げて賛同できるわけではありませんが、人類の第一級の知性が示す未来を共有できたことは非常に有意義でした。

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