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網膜異常により視力を失った人に再び光を

本日は、スタンフォード大学における人工網膜開発を紹介したいと思います。

老化現象に伴う黄斑変性症などにより失明した人の視力を回復させるために、眼科医でもあるスタンフォード大学のフィシュマン博士のグループが人工網膜システムの研究開発に取り組んでいます。

これは、黄斑変性症や外傷などにより損傷した網膜を、シリコン素子と人工シナプス回路からなる人工網膜と置き換え、視力を取り戻すという研究です。直感的には、デジタルカメラの受光部であるCCDと類似のシリコン素子が網膜の代わりをし、そのシリコン素子からの信号が視神経末端を経由して脳に送られると考えれば分かりやすいと思います。

重要なのはこの非生命体のシリコン素子と生命体である視神経末端を効果的に接続するインターフェース部分です。そのインターフェースは、グルタミン酸あるいはアセチルコリンなどを含む特別な生化学液からなる神経伝達物質を、視神経末端へ「吹き付ける」ことによって視覚情報を脳に送るという仕組みになっているということです。

この研究は、現在のところまだ動物実験の段階であり、猿あるいは人間への適用にはまだ3年ほどかかるということですが、人工網膜を生きている視神経と連結させて光の信号を脳に送る技術が確立されれば、将来的には黄斑変性症だけではなく、網膜剥離、糖尿病性網膜症、あるいは外傷により失明した人の視力を回復させることも夢ではありません。

この技術の応用例として想像力を働かせれば、例えば望遠ズーム機能を備えた人工眼球と組み合わすことによって普通の何倍もの視力を持った目を作る事も不可能ではないですし、可視光だけではなくて赤外線に高感度の人工網膜に置き換えれば夜間でも高い視力を保つ事が可能になりますね。まさにスタートレックの世界です (スタートレック・ネクストジェネレーションに登場した盲目のジョーディは、「バイザー」という装置の助けを借りて、可視光だけではなくて赤外線から紫外線、果てはラジオ波までを検知し、その信号を脳で捕らえて認識しています)。

彼らの研究からはまさに「目」が離せません。

(参考文献)
“The Artificial Synapse Chip: A Flexible Retinal Interface Based on Directed Retinal Cell Growth and Neurotransmitter Stimulation”, M. Peterman and et. al., Artificial Organs, Volume 27 Issue 11 pp. 975, November 2003