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血中ガン細胞濃度を測定することによる乳ガン診断

テキサス大学のM.D.アンダーソン癌センターのMassimo Cristofanilli医師を中心とするグループが、遠隔転移を持つ乳ガン患者177人を対象に行った二重盲検試験から、血中がん細胞濃度の高い患者のガン進行率が高く、生存率が低いことを証明するデータを得たとの報告を2004年8月19日号のThe New England Journal of Medicineに発表しました。ちなみに、本発表はかなり注目度が高く、ロイター、共同通信(AP)、Detroit Free Press、The Global and Mail、WebMD、Xinhuanet News(北京)等でも一斉に取り上げられています。

彼らの主張によると、遠隔転移を持つ乳ガン患者の内、血中ガン細胞数が7.5ml中5個未満の患者と 5個以上の患者では、有意に生存率が違うと言うことです。具体的には、前者の患者グループの無進行生存月数の中央値が7ヶ月であるのに対して、後者の患者グループではたったの2.7ヶ月です。この結果は、血中にガン細胞が多く流れ込んでいる患者の予後は悪いというごく自然な予測と一致します。

さて、この事実に加えて、本試験が持つ重要な意義は、血中の微量のガン細胞が測定できる技術が開発されているという事実にあると思います。この技術は、米国Veridex社が開発したCellSearch Systemと呼ばれる最新の血中ガン細胞濃度測定法です。今回は乳がんを対象に生存率の調査が行われましたが、本技術は、結腸がん、肺がん、前立腺がんなどの他のガンの予後診断・予測にも応用が考えられています。さらに、単に予後診断だけではなく、簡易で非侵襲的な治療効果の判定法にもなりますし、より微量のガン細胞が測定できるようになれば、スクリーニングとしてのがん診断にも応用できる可能性があります。本測定法を、ガン遺伝子診断や発現タンパク質診断などと組み合わせれば、簡便でより確度の高いガンの早期診断法への道が開けてくるのではないでしょうか。

しかしながら、多くの医師や研究者によるこうした数々努力にも拘わらず、2004年には米国だけでもガンによって約56万人もの犠牲者が出ると予測されています (M.D.アンダーソン癌センター、Clifton Leaf教授言)。この犠牲者数は、1971年に米国ガン法(National Cancer Act)が制定された当時と比べても実はほとんど減少していないのです。ガンに関する人類の知見はこの30年で確かに飛躍的に深まってはいるものの、ガンの発現の想像以上の複雑さが、ガンの根本治療の妨げになっているように思われます。その上、多くの研究者は細分化された特定のガンの個別の研究にのみ専念する傾向があり、生体内で発現するガンを総体として見ることを怠っているのではないでしょうか。

最後は表題から少々脱線してしまいましたが、がん研究・医療に携わるすべての者が、個々の成果に一喜一憂することなく、「実際に人の命を守る」という大前提を常に忘れずに、着実にがん研究を推進させていってもらいたいものです。