Posts tagged ‘iPad’

『新・細胞を読む』山科 正平

われわれ人間のからだは60兆個の細胞からなると言われています。本書では、電子顕微鏡などの高倍率顕微鏡を駆使して撮影された写真によって、それら細胞の姿を余すところ無く紹介してくれています。

本書は、1985年に発刊された『細胞を読む』の改訂第2版という位置づけですが、この20年間の生物学と顕微鏡技術の大いなる発達に基づき、内容的には全く新しい書ともいえる大幅なアップデートを経て発行されました。

現在の最先端の電子顕微鏡では0.1ナノメートル(1メートルの100億分の1)程度の構造まで見ることができます。つまり、細胞はおろか、一つの一つの分子まで見ることが可能になるのです(分子を見ることができるといっても、実際に分子を見るにはかなり厳しい条件をクリアする必要があるのですが)。

99の項目において、人間を含むいろいろな生物の細胞をこのような高解像度・高倍率の写真で紹介し、それに併せてその細胞の体内での働きを説明しています。つまり、各細胞の体内での働きに思いを馳せながら細胞の姿を見ることができるという組み立てになっています。

本書では主に電子顕微鏡によって撮影された「生きていない」細胞の写真が中心となっています(ただし、精子と卵子が受精する瞬間の写真などはあります)が、現在では進化した光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、レーザー顕微鏡、そして原子間力顕微鏡などによる撮影が可能になり、さらには生きて活動する細胞の姿を画像化できつつあります。

このように現在では細胞の形だけではなく、その細胞が活動している姿をも捉えることが可能になりつつあります。次期改訂版では、iPadなどの電子書籍に対応し、実際に細胞が活動している姿を動画で見ることができるのようになることを期待しています。

このような地味ですが真摯な研究成果を視覚的に紹介してくる書を著した筆者と出版社に感謝し、筆を置きたいと思います。